ある日、Qの研究室に珍しくお客さんが来た。
コンコン。
ドアがノックされ、Qはビクッとなる。
「誰?(変な人だったらどうしよう)」
変な人が思う変な人は、むしろ普通な気もする。
そんなどうでもいいことを考えながら、Qはドアを開けた。
「は、初めまして!!Qさんの助手になりたくて参りましたPと申しますっ…へぶっ!!」
Qは最後まで話を聞かず、ドアを閉めた。
「なんか黄色いのが来たなぁ…」
「あの!私…」
ドアを閉めてもPは諦めていないようだ…
助手希望者はこれまでもたくさん来た。
Qとて鬼ではない(多分)
そのため、3回ほど助手を雇ったことがあった。
しかしQの研究室は、半年休みなく働くことも当たり前だ。
Qが研究に没頭しすぎて、時間感覚を失うためだ。
そして皆、灰色になり辞めていった。
そのため現在は、研究ロボットだけを補助として使っている。
「あの、私…親友さんから紹介されてきました!」
「え゛っ!?」
思いがけない言葉に、Qは思わず声を出す。ドアは閉めたまま。
あの親友が何のために…?
Qが親友に電話をすると、1回目のプルル…の途中で出た。
📞「ヤッホー!私の可愛い〜後輩はそっちに着いた?」
「どういうことなの?」
📞「騙されたと思って、その子を3日助手にしてみて!とても貴重な存在よ!」
「だから〜どう言うこと?」
「まあ関わればわかるって。私が信用できないの?」
「ハァ〜…わかった」
「やったー!じゃあよろしくね!いじめちゃダメよ!」
プツッと嵐のような電話が切れた。
Qが渋々ドアを開けると、花でも咲いたような笑顔のPが立っていた。
「とりあえず入って」
Qは無愛想に言う。
「なんて白い方…眩しいほどです」
Pの呟きに、Qはハッとなる。
「あなた…」
「あ、ごめんなさい!急に白いなんて、意味わからないこと言ってしまって…」
Pは慌てているが、Qは目をまん丸にして驚いた。
親友の“貴重な存在よ!”という言葉を反芻する。
そして
「私は今は白じゃないわ。真っ白に戻ろうとしてるの。」
と答えた。
Pは目をまん丸にしている。
そしてまるで、春風に吹かれたたんぽぽのような黄色い微笑みを浮かべた。
「Qさん、あなたは真っ白です。論文からも白さが伝わってくるほどに」
この言葉は、Qが今まで浴びせられた、どんな褒め言葉よりも嬉しかった。
「あなたは、とても素敵な黄色ね」
そう返すとPは
「Qさんに褒めていただけるなんて…今すぐ死んでもいいです…」
と顔を赤くしてオレンジになった。
Qは「少しだけ待って!」とPに告げ、mokoにPの黄色を登録した。
これでmokoに必要な色は揃った。
あとはグラデーションを再現するだけ。
Qは久しぶりにパステルカラフルな気持ちになれた。
つづく
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