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【創作ストーリー】天才のグラデーション第8話〜陽口ひなたぐち②〜

天才のグラデーション

QはPと出会ったその夜、早速グラデーションを再現してみた。

しかし、何か違う。

「もっと…。」

以前は、グラデーションを見ると心にグッとくるものがあった。

まるで夜の海のを照らす、柔らかな月のような色になれた。

しかし、今はなんといえばいいのか。

「無色透明」

Qは思わず呟く。

飼い猫モコがにゃーと鳴いた。

同時にmokoも鳴いたような気がした。

「やっぱり…。」

Qはそう呟きながら、その日は深い眠りについた。

Qは今まで、心を色でしか表現できなかった。

しかし、今は違う。

ザワザワしたり、ぽかぽかしたり、キラキラしたり…。

今までと違う、人らしい感情を持つようになっていた。

黙り込むQを見て、Pが心配そうにのぞいている。

「Qさん?」

Qはハッと我にかえる。

するとPはくすくす笑いながら

「そんな顔初めてみました!素敵です!」

とキラキラした目で言った。

ここ数日、QはPを不思議そうに眺めていた。

Qは今まで、自分自身に興味を持つ人を見たことがなかった。

誤解を招かないよう説明すると、Qの才能には誰もが一目置いている。

Qの研究、Qの容姿、Qの頭脳にはみんな興味津々だ。

しかし、Qの表情や、Qの性格、Qらしさというものに興味を持ってくる人は滅多にいない。

両親でさえも、興味がない。

「変な子ね。」

Qがそう呟くと、Pは「はい!」と笑顔で答える。

それを見て、Qは笑った。

Qの笑顔を見て、Pはまた褒めちぎる。

媚びているわけではなく、本心なのだと伝わる。

「やっと親友が言ってた意味がわかったわ。」

Qは月明かりに照らされたような、穏やかな気持ちになれた。

そして、気づいた。

グラデーションが見れなくなったのではない。

グラデーションはいつも同じだった。

いつも綺麗だった。

でもグラデーションより、心動かされ、そして心おだやかになれるものに、少しずつ出会っていたのだ。

Qは自分の心が、やっと少し見えた気がした。

「このまま朝まで行くわよ!完成しそうなの。」

Qがそういうと

「はい!もちろん!」

とPが満面の笑みで言った。

側から見たら、研究室に篭りきりの変人だろうが、Qは人生で1番キラキラしていると感じた。

それはPも同じ気持ちだろう。

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